| 要約 |
行射(弓を引く動作)により胸郭出口症候群(Thoracic outlet syndrome:TOS)が発症した弓道部員の治療経験を報告する.症例は10代女性で,愁訴は行射で右上肢のしびれ,脱力,震えにより的への狙いが定まらないこと,長時間の学習での右斜角筋痛と肩凝りなどであった.初診時,自覚症状はなくTOSの誘発検査は陰性であったが,右斜角筋の拘縮と腕神経叢(Brachial plexus:BP)の神経固定効果陽性を認め斜角筋痛としびれの誘発からTOSと判断した.行射を中止し斜角筋の伸張と神経滑走拡大を図った.途中,BPと小胸筋の伸張を追加し最終的には症状が緩解した.中学時の外傷で斜角筋拘縮が生じ,行射によりBPが繰り返し牽引され発症したものと考える.TOSの誘発検査は陰性であったが,斜角筋拘縮と神経固定効果陽性,主訴の再現からTOSとの診断に至り,斜角筋拘縮と神経滑走の評価は不可欠である. |