ハンドセラピィとは

認定ハンドセラピストの声

飯田市立病院 古田裕之

 私は2017年12月2日に実施された認定ハンドセラピスト認定試験に合格し、認定ハンドセラピストになることが出来ました。認定ハンドセラピストになるための道のりは決してたやすいことではありませんでした。しかし、この制度を整備していただけたことで、とても貴重な経験・恩師・仲間という財産を得られ、ハンドセラピストとしての基礎を身につけることが出来ました。長年日本ハンドセラピィ学会を支えてこられた、歴代顧問・歴代会長・理事長・理事・講師・委員の先生方に厚く御礼申し上げます。
 私は作業療法士1年目から骨折・腱断裂・末梢神経障害・複合組織損傷の患者様を担当し、手外科医からハンドセラピィの指導を受けていました。しかし、手外科医の期待に応えることが出来ず日々悩んでいました。そこで研修会に参加して少しでもスキルアップしなければと考え、日本ハンドセラピィ学会に入会し研修会に参加しはじめました。当時悩んでいた私を救ってくださったのは日本ハンドセラピィ学会主催の研修会で講師をされていた先生方で、地域レベルで開催している勉強会・研修会に誘っていただけました。病院での研修も受け入れていただき、ハンドセラピストの恩師が私にも出来ました。このことが私のハンドセラピスト人生の大きな転機となりました。困った時には丁寧に相談にのっていただけ、徐々に成功体験を積み重ねることが出来ました。
 認定ハンドセラピスト制度が整備され臨床研修制度が出来た当初は職場に研修の許可を得られるか不安でしたが、制度が改訂され認定臨床研修の読み替え措置が出来たことで職場から研修の許可が得られました。経験年数を経てから研修を受けることに多少不安はありましたが、認定ハンドセラピストの先生から指導を受けられることが何より楽しみでした。愛野記念病院・札幌徳洲会病院で快く研修を受け入れていただけ、丁寧にご指導いただけました。机上ではなく臨床でディスカッションを行いながら、治療戦略・戦術を学びながら、知識・技術・思考を磨くことが出来ました。職場ではハンドセラピィ部門の責任者は私であり指導することが多く、臨床の場で経験豊富なハンドセラピストとディスカッションすることは出来ませんでした。論理的で熱意・創意のあるセラピィを目の当たりにして、今までハンドセラピストとしての経験を振り返ることが出来ました。新しい発見が多くあり、熱意を注入していただけました。症例レポートでは3名の認定ハンドセラピストに丁寧にご指導いただけました。症例のセラピィ・症例レポートの指導を直接受けることが出来るのはとても貴重な経験で、自分の担当患者様に還元できるとても良い機会でした。職場での臨床に加えて定期的に治療経過を報告するのは大変でしたが、丁寧に治療経過を振り返る良い機会であり、今振り返るととても充実していて楽しい日々でした。
 認定ハンドセラピストになるためには道のりは決してたやすいことではないですが、試験までのプロセスを経て得られた財産はとても大きなものでした。今はやっとハンドセラピストとしてスタート地点に立った気持ちです。患者様・社会に少しでも貢献できるハンドセラピストを目指して日々精進いたします。

貞松病院 杉野美里

 2014年に理学療法士で第1号の認定ハンドセラピストを取得させていただきました。これは、ひとえに『人とのご縁』のおかげだと思っております。
 最初のご縁は、長崎県にありますいまむら整形外科医院の手外科医「今村宏太郎先生」との出逢いです。理学療法士の免許を取得後、約十年間一般整形、スポーツ整形、手外科の3本柱でリハビリに従事させていただき大変お世話になりました。クリニックということもあり、短時間で判断力、決断力が問われ、またその場で患者様の状態を少しでも良い方向へ変化させていく治療技術が要求されました。日々模索しながら日常の診療にあたっていましたが、毎日の疑問や悩みは尽きることがありませんでした。しかし今村先生のご配慮で、いつでも医師とコミュニケーションを図ることができましたので、何かあればすぐに相談しご指導いただきました。また学術的にも援助をいただき、各学会や長崎手外科研究会へセラピストの参加も奨励していただき、ハンドセラピストの礎をここで構築させていただきました。
 第2のご縁は愛野記念病院の認定ハンドセラピスト「田崎和幸先生」との出逢いです。
 理学療法士として手外科疾患の患者様を診る機会が増えるにつれ、治療に難渋することが多くなってきました。長崎県ではその時代、手外科疾患のほとんどを理学療法士がみていましたが情報量が少ない時代でしたので、ハンドセラピィの知識と技術を持った理学療法士はほとんどいませんでした。そんな中、名古屋掖済会病院の第一線でご活躍されていた田崎先生が愛野記念病院に赴任され、「長崎ハンドセラピィ研究会」を立ち上げてくださいました。研究会では、基礎解剖から治療技術まで惜しみなく職種の域を超えて丁寧にご教授くださいました。この時、ハンドセラピィの素晴らしさと奥深さを知るきっかけとなりました。その頃、仕事が充実し、治療の面白さを実感していたこともあり女性ながら家庭を顧みず仕事をしていましたが子供を授かったことを機に一度、家庭に入り主婦業に専念することを決め、前職を退職しました。しかし退職して間もなく、『認定ハンドセラピィストを目指さないか』と、田崎先生よりご推薦の話を頂きました。私は退職して職を失い、専業主婦を公言したにもかかわらず、ここで迷わず認定ハンドセラピストを目指すことを決意しました。この決意を家族に話したとき、「ただ単に資格取得を目指すのではなく、資格に見合った人格、技術を身につけ、社会貢献ができる人になってほしい」と背中を押して資格取得を応援してくれました。その時から道がひらけたように、退職したはずの前医から非常勤で手外科疾患だけをみる機会を与えていただいたり、九州ハンドセラピィ研究会の立ち上がりを機に私もすぐに仲間に入れていただいたりと、いろいろなことがタイミングよく回り始めました。
 その後、幸運にも現職場の貞松病院での就職のお話もいただき、ここで第3のご縁がありました。現在も日々、ご指導いただいている手外科医「角光宏先生」との出逢いです。私が就職して、しばらくして手外科医である角医師が着任され、ここから加速的に手外科の患者様に深く携わらせていただくことになりました。重症例、軽症例にかかわらず、いろいろな患者様に対して、手外科医として真摯に診断、説明、治療に当たられる先生の姿勢を目の当たりにして、私もセラピストとしての在り方を改めて考えることとなり、今現在も多くのことを学ばせていただいています。
 私の認定ハンド取得までの道のりにおいて、その時々に素晴らしい先輩や後輩に助けていただき、各地区のセラピストの仲間や日々の診療の中での患者様との出逢いとご縁が自分を成長させる時間となり本当に感謝するばかりです。今後は、これまでお世話になった方々のご恩を胸に、これから認定ハンドセラピストを目指す皆様のお役に少しでもたてるように「恩送り」をしていきたいと考えています。これから認定ハンドを目指す方には、ご苦労も多いかと思いますが、専門的な知識と技術を学ばれた皆様にしか成し得ないセラピィがあり、多くの患者様がそれを待ち望んでいますので、あきらめず一歩ずつ前進し、素晴らしい認定ハンドセラピストになっていただきたいと節に願います。